16 フラ イリイリ
16 フラ イリイリ
フラ イリイリは、小石を使った踊りで、古代ハワイで踊られていました。それを見た人によると、踊り手は一人だったそうです。ダンサーは両手にそれぞれ2つの小石を持ち(故に踊りの名前がイリイリなのですが)カチャカチャと鳴らしました。のちのカスタネットのように使います。このように、ミンストレル・パーフォーマンス*1で、“ボーンズ*2”を使って出す音と同じような音を作り出しています。また、他の人によれば、このフラの伴奏にパフやイプヘケも使われていたといいます。
その時代、イリイリは真面目な様相で行うフラでした。正確にいうと、重みのある声で、ハワイ人が「ai-ha’a(アイハア)*3」という様式で演じられました。しかし、しばしばあまり強調せず、穏やかで自然な調子で「ko’i-honua(コイホヌア)*4」も演じられていたようです。故に、低い声を使っているのかもしれません。
このフラを説明する歌の一部をご紹介しましょう。
唄
私達ふたり、ワイピオに泊まった
雄大なヒイラヴェを見てごらん
私達は運んで、切った 私たちの愛のために
ナウエの海から ハラの実を
崖の上で揺れるたくさんのレフア
座って オーオーの声に耳を傾けてごらん
ツリーシェルの鳴き声を聞いてごらん
田園風景の広がるワイピオはハワイの厳しい風にさらされ、くり抜かれたような地形で、谷深い所にあり、広々とした場所です。行く人は非常に少ないでしょうが、そのことをハワイの旅行者にお伝えしておきます。ヒイラヴェは、渓谷にかかる雲を超える場所から落ちる、高さのある滝の一つです。
カフリは、美しく表現された洒落た名前で、ハワイの森に住むツリーシェルの固有種(マイマイ亜科)です。12章にも記載があります。原住民は、このかたつむりが出すキーキーという鳴き声には力があると信じていました。筆者もしばしばこの鳴き声を聞きました。しかし、筆者の耳ではコオロギの鳴き声との区別がつきませんでした。これは、原住民がツリーシェルにについて書いた歌です。
ツリーシェルのうた
遠くで鳴いている
近くで鳴いている
可憐な歌のレイ
アコレアのレイ
コレア コレア
私に露を持ってくる
アコレアからの露を
素朴な想像力の一端は、フラの中で用いられたと言われています。しかし、どのような踊りに関連しているものかについては、わかりませんでした。
脚注:255 akoleaは、ウラボシ科のシダ。Hillebrand医師によると、ウラボシ科のシダ植物としていくつかに分類され、ハワイ諸島にある植物。並外れた長さがあり、近くにある低木や木の枝に先端の巻き目部分を絡め支えにしながら成長する。
脚注:256 kolea 胸部に赤い色を持つ千鳥。
*1 1830年代から1950年頃まで続いた、アメリカ合衆国のエンターテインメントの一種。顔を黒く塗った白人、時代を追って黒人によって演じられ、踊り、音楽、寸劇などを交えたショー。当初は差別的な黒人風刺の要素もあった。時代とともに人種差別を助長するものとして大衆性がなくなった。
*2 アイリッシュ音楽やカントリー音楽でも使用される打楽器。動物の骨を2本使用し、指に挟み、たたき合わせる事で音を出す。肋骨やすねの部分を使用することが多かったが、現在は木製のものが一般的。
*3 膝を曲げたスタイル
*4 家系を示すチャント。古代ハワイでは、長男が自分の家系図をすべて覚え後世に伝えていかなければならなかった。
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